ゴージャスで美しいクラシックカーのEV化およびリストア製造販売で、近年、ミレニアル世代の超富裕層から爆発的な人気を博しているのが、英国シルバーストンに本社を置く2018年創業のルナズ社(Lunaz Group Ltd)です。クルマ好きならピンとくる通り、シルバーストンはF1グランプリなどのレースが開催されるサーキット場がある村。この地から、ロールスロイス、ベントレー、レンジローバー、ジャガーといった名だたるクラシックカーの世界初EVが旅立っています。
ルナズ社では急増する需要に応えるため、2021年度末には製造施設を拡大、昨年1年の間に従業員も500%増員し、生産能力を向上させました。それでも、欧州のみならず、米国、アジア太平洋地域で大幅な売り上げを記録し続け、生産が追い付かない状況です。言い換えれば、それほど若い世代、特に内燃車に厳しい都市部の若者にとって、最高峰のEVクラシックカーは魅力的だということでしょう。
このムーブメントをさらに加速させたのが、新たにラインナップに加わったアストンマーティンDB6です。1965年から1970年の間に製造されたDB6は、チャールズ国王が21歳の誕生日に故エリザベス女王からプレゼントされた車としても知られ、国王は50年以上たった今も、1970年型の「アストンマーティンDB6・ヴォランテ」に乗り続けています。
そんな高級英国車のアイコンとして欠かせないアストンマーティンDB6が、今回ルナズ社のEVコンバージョンラインナップに加わったことは、同社に出資するデビッド・ベッカム氏も「大の自動車愛好家として、うれしく思う」と歓迎しています。
待望のアストンマーティンDB6 EVは、2023年11月、ついにその全貌が発表されました。積まれていた直列6気筒エンジンは取り外されますが、ルナズ社の優秀なエンジニアによる最新の電動パワートレインは、総重量をはじめとするあらゆる要件を満たし、本来の特性と適合させるべく、完璧に設計されています。バッテリーの種類は明らかにされていないものの、容量は80kWh~120kWh、航続距離は約255マイル(約410㎞)だといわれています。
さらに、ルナズ社の徹底した「アップサイクル」哲学は、車内のインテリアにもおよんでいます。驚くべきことに、カーペットには海から回収した漁網が、ダッシュボードのフロントパネルやクォーターガラスハンドルには廃棄された卵やナッツの殻が、シートやドアガードのパイピングにはリンゴの搾りかすが、そのほか再生ナイロン、リサイクルペットボトル、トウモロコシや木材ベースのパルブ繊維など、ありとあらゆるサステナブルな素材が使われているのです。
ルナズ社の創業者で同グループの最高経営責任者(CEO)でもあるデビッド・ローレンツ氏は、以下のようにコメントしています。
「このアップサイクルプロジェクトは、高級品の新たな可能性を切り拓く素晴らしいショーケースとなるでしょう。アストンマーティンDB6 が示すように、名ブランドにふさわしい豪華なインテリアは、環境負荷を最小限に抑えた素材で作り上げることができるのです。私たちのチームが、豪華で肌触りも良い調和のとれたインテリアを、これほど幅広い革新的な素材を組み合わせて作り上げたという事実は、私たちのスキルとクリエイティビティの証です。一般に入手可能な素材を越えて採用したさまざまな素材と並外れた手法との組み合わせにより、車のインテリアクオリティは向上しました」
そして、気になるのは、このルナズ社のアストンマーティンDB6 EVのお値段。もちろん、ご想像通り決して安くはありません。現時点では、約65万ポンド(約1億2330万円!)といわれています。それでも、ミレニアル世代の73%が「社会意識が高く、サステナブルなブランドの製品であれば、多くのお金を費やしても構わない」と回答する(ニールセン調べ)現在、ルナズ社の未来は明るく、その成功は約束されているといえるでしょう。
出典:Lunaz Group Ltd