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ドイツ政府、ガソリンスタンドへの急速充電器の設置を義務化

 ドイツ政府は、2024年5月29日、大半のガソリンスタンドにEV用の急速充電器設置を義務付ける方針を閣議決定しました。この政府案は200以上の給油所を展開している企業が対象となり、2028年1月1日以降、各企業が運営する給油所内か近隣に150 kWh以上の出力の急速充電器を最低1基設置することを義務付けられます。

 これにより、ドイツのガソリンスタンドを運営する大手企業10社ほどが対応を迫られることになり、国内の急速充電器は8000基増えると見込まれています。

 このガソリンスタンドへの充電器設置義務の法案は、2023年9月にミュンヘンで開催された、IAAモビリティ2023においてオラフ・ショルツ首相が明らかにしたドイツ政府の戦略的プロジェクト。

 今回の義務化について、シュテフェン・ヘベストライト国務長官は記者会見で「充電ポイントが少なすぎるため、必要な場所で充電できるかどうかに確信が持てず、ユーザーは電気自動車の購入をためらっています」と述べました。また、「同時に、それを利用する電気自動車の数が十分ではないことによって、急速充電ステーションの市場がまだ存在せず、急速充電ステーションを設置する価値がまだない場所も多い」と現在の状況を指摘しました。

ドイツのEV充電スポット
ドイツのEV充電スポット

 ヘベストライト長官は、このような電気自動車業界が直面しているインフラ問題を「鶏が先か卵が先か問題」と呼び「より多くの市民がEVに乗り換えることを確実にするためには、大都市や都市中心部を中心に、十分な数の公共充電ポイントを利用できるようにしなければならない」と語りました。

 また、今回の義務化に関しては、ドイツ国内でも賛否の意見があります。

 ドイツのエネルギー専門メディア、クリーンエネルギーワイヤーによると、国内最大のエネルギー産業協会BDEW(連邦エネルギー水道事業連合会)とケルスティン・アンドレーエ代表は、「EVの充電は内燃エンジン車への給油とは異なるユースケースで、EV充電インフラは、現在需要に合わせて整備されている。前向きな市場の発展を考慮すると、このような厳しい規制措置を正当化する理由はない」と語りました。そして、「政府はその代わりに手頃な価格のEVに焦点を当てるべきだ」と付け加えました。ドイツでの補助金を除いた新規登録電気自動車の平均価格は、2023年に4000ユーロ(約70万円)以上上昇し5万2700ユーロ(約900万円)となっていて、市場での安価なモデルの不足が指摘されています。

 また、ドイツ最大のガソリンスタンド企業であるアラル社のアヒム・ボーテ社長も、この規制を否定。「すべてのガソリンスタンドに充電ポイントが必要なわけではない。EV充電器の設置は、需要と利用の可能性が最も高いと思われる場所に集中すべきだ」としました。

 ドイツ国内の公共EV充電器の数は、2024年4月時点で約11万5000基、うち急速充電器は約2万2000基。政府は30年までに、プラグインハイブリッド車を含む電気自動車の普及台数を1500万台に引き上げる目標で、2030年末までにドイツ全土に100万カ所の公共充電ポイントを設置するという野心的な目標も掲げています。

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