スペースXが、衛星通信サービス「スターリンク」を軸にした携帯キャリア事業への参入を進めていることが明らかになりました。同社のグウィン・ショットウェル社長兼COOは2026年8月5日、決算説明会でこの件について言及し、Verizon、AT&T、T-Mobileの米大手3社が持つ合計約6000億ドル規模の市場に対し、「かなりの数の顧客を獲得できると見ている」と自信を示しています。ショットウェル氏は、軌道上の衛星ネットワークを活用することで通信の「デッドゾーン」をなくせる点や、自然災害時にもより安定したサービスを提供できる点を強みとして挙げ、「スターリンクモバイルにはとても期待している」と述べました。
具体的な仕組みについても情報が出ています。スペースXウォッチャーのS.E. Robinson Jr.氏の投稿によると、同社は既存のスターリンクアンテナやゲートウェイ、さらにはテスラのスーパーチャージャー拠点に小型の携帯基地局(フェムトセル)を追加設置する計画とのことです。この基地局には、EchoStarから取得した約65MHz分の地上通信用周波数帯が使用され、一般的なスマートフォンであれば特別な機器なしにそのまま接続できるとされています。

注目すべきは、通信網構築のアプローチです。従来型キャリアが行う大型マクロ基地局のリース・建設を必要とせず、既存のスターリンク設置拠点を分散型の小型セル網に転用することで、許認可取得の手間や設備投資コストを大幅に抑えられるとしています。バックホール回線には、既存のスターリンク衛星回線または地域の光回線を活用する方針です。商用サービスの開始時期は2027年末を目標としているとのことです。
一方で、この方式には限界もありそうです。基地局は屋根上への設置が前提となっており、電波は見通しの良い場所ほど届きやすい性質を持つため、トンネル内やビルの奥まった場所での通話は従来の基地局と同様に難しいと考えられます。バックホールに衛星回線を用いる場合は特に、衛星と交信できる屋外の見通し環境が前提となります。ショットウェル氏の言う「デッドゾーンの撲滅」は、郊外や山間部、洋上といった従来基地局が届いていなかった屋外エリアを主に指しているとみられ、都市部の屋内・地下といった電波遮蔽エリアの課題解消には、別途スモールセルなどの技術が必要になりそうです。

テスラのスーパーチャージャー拠点が基地局候補地に含まれている点は、EVインフラとの親和性という観点でも興味深いポイントです。充電拠点の面的な広がりが、そのまま通信網の面的なカバレッジ構築に転用される可能性があり、今後の展開が注目されます。

