電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第21回
by じんべい
オプティマスのライバルとなる人型ロボットたち
こんにちは、じんべいです。
本記事の前編では、人型ロボット市場の成長予測やオプティマスの技術、またテスラの株価に与える影響についてお伝えしました。まだ前編を読んでいない方は、ぜひそちらもチェックしてみてください。
今回の後編では、競合他社の人型ロボットとの比較と競争状況、さらにはオプティマスが激しい競争に勝つ見込みがあるのか考察していきたいと思います。
現在、ロボット工学の分野では、各企業が独自の技術とアプローチで競争を繰り広げています。中でも、二足歩行ロボットの開発は技術力とイノベーションの象徴とも言える分野です。各社のロボットはそれぞれに強みを持ち、競争の中で進化を続けています。では、他社が開発するロボットの特徴や、それぞれの技術的な優位性はどのようなものでしょうか。今回はじんべいが注目した競合の人型ロボットを4つご紹介します。
① Boston Dynamics | Atlas(アトラス)
昨年4月に完全電動となったAtlas(出典:Boston Dynamics 公式ウェブサイト)
マサチューセッツ州を拠点とするBoston Dynamicsは、ロボット工学の最前線を走る企業です。その革新的な設計と運動制御技術で広く知られています。2021年に韓国の現代自動車によって買収されたことで、同社の技術開発はさらに加速したと言われています。Boston Dynamicsは、Atlasのほかに四足歩行ロボット「Spot」や物流支援ロボット「Stretch」など、多岐にわたる製品ラインナップを持っています。
そんなBoston Dynamicsが手がける人型ロボットAtlasは、世界で最も高度な二足歩行ロボットの一つです。もともと油圧式で設計されていましたが、昨年4月に電動式に改良され、動作精度や静音性が飛躍的に向上しました。これまでのAtlasは、ジャンプやバク転といった高度な運動能力を持つロボットというイメージが強かったかもしれませんが、新型Atlasは全く異なる姿をしていて、まるで軟体動物のように滑らかに動き、自在に旋回したり回転したりします。ちょっと人間離れした動きなので、見る人によっては気持ち悪いと感じるかもしれませんが、その自在な動きから技術の進化を強く感じられますね。
エンジンカバー部品をコンテナから移動式台車に移す作業を行うAtlas(出典:YouTube Boston Dynamics 公式チャンネル)
このAtlasは最近、さらに進化を遂げています。それは、Atlasが遠隔操作ではなく、カメラやセンサーから得た情報を基に自律的に動作するようになった点です。Boston Dynamicsが公開している映像では、Atlasが製造工場の環境で自律的に作業する様子が紹介されています。エンジンカバー部品をコンテナから移動式台車に移す作業を行う姿は、人間とは異なる可動域で動き、高い精度と効率性を示しています。Atlasが今後、実際に物流センターや倉庫での複雑な作業に応用できる日も近いと思います。つまり、Atlasの進化は物流業界や製造業界に大きな変革をもたらす可能性がありますね。
② Agility Robotics | Digit(デジット)
物流・製造業で活躍が期待されるDigit(出典:Agility Robotics 公式ウェブサイト)
オレゴン州に拠点を置くスタートアップのAgility Roboticsが手がける実用的な二足歩行ロボットがDigitです。Agility RoboticsはFordやAmazonなどの大企業から出資を受けており、これらのパートナーシップを通じて物流や製造業などの分野でロボットの導入を進めています。例えば、AmazonはDigitを倉庫業務に試験的に導入し、Fordは自動運転技術と組み合わせたラストマイル配送サービスの構築を目指しています。
Digitは人間のような脚部を持ち、階段の昇降や不整地での歩行が可能なロボットです。主な用途は物流や倉庫内での荷物運搬です。昨年6月、米物流大手のGXO Logistics社がDigitを導入する複数年契約を締結したことが話題となりました。これは業界初の正式なヒューマノイドロボットの商用導入でした。
現在、Digitはアトランタの物流施設でコボット(作業ロボット)からコンベアへの物品移動を行っています。今後、多くの物流会社や製造工場で、Digitのような人型ロボットがこれまで人が行っていた労働を代替していくことでしょうね。2030年に向けて、この動きはさらに加速しそうです。
③ Figure AI | Figure 02(フィギュア02)
すでにBMWグループの生産現場で試験運用されているFigure 02(出典:Figure AI 公式ウェブサイト)
カリフォルニア州に拠点を置くスタートアップ企業のFigure AIは、2022年に設立されたばかりの歴史の浅い企業ですが、人型ロボットの開発を急速に進めており、すでにテスラのオプティマスと同様の動きや性能を見せています。
Figure AIの最新モデルであるFigure 02は、ドイツの自動車メーカーBMWグループの工場の生産ラインでテスト段階にあります。穴の開いた板金部品を固定具の突起部分に合わせて配置するなど、一定の器用さが求められる作業を行い、シャシーの一部を組み立てることに成功したと言われています。
実際の映像を見ると、確かにFigure02は工場での簡単なタスクであれば、しっかりと実行できそうだと感じられます。自動車の生産工程には、作業者が腕を上げ続けたり腰を深く曲げたりといった、人間工学的に問題のある作業があります。将来、これらの作業を手先の器用な人型ロボットに置き換えられれば、作業者の疲労からくるミスや、それによって発生する労働災害を削減できますね。
BMWグループは、Figure AIと協力して自動車生産に人型ロボットを安全に導入する方法をテストしており、この技術の開発から産業化までをサポートする意向です。オプティマスと同様に、今年実際の生産ラインでの本格導入が実現するかもしれませんね。
④ 1X Technologies | NEO Beta(ネオ・ベータ)
人間のような滑らかな動きをするNEO Beta(出典:1X Technologies 公式ウェブサイト)
最後にご紹介するのは、ノルウェーに拠点を構える1X Technologiesが開発するヒューマノイドロボット、NEO Betaです。ChatGPTで知られるOpen AIも出資する1Xは、一見するとオプティマスと見間違えるような外観をしています。その動きは非常にリアルかつ滑らかで、発表された時にはXで議論を呼び、多くの人が本物の人間ではないかと疑問を投げかけたほどです。
NEO Betaは日常的な家事支援のために設計された二足歩行ロボットで、身長は165cm、重量は30kg。時速4kmで歩行し、時速12kmで走行できます。20kgの積載能力を持ち、1回の充電で2〜4時間稼働します。
1Xが公開している動画では、家庭の食洗機からグラスを器用につかみ、それを食器棚にしまう様子が確認できます。卵のような割れやすい物もちゃんとつかんで、人に渡すというタスクもこなしていることから、これは家庭用、または工場作業用のヒューマノイドロボットとして、テスラの強力なライバルになりそうな製品と言えますね。
テスラのオプティマスが持つ圧倒的な優位性とは?
このように、他社のヒューマノイドロボットが目覚ましい進歩を遂げる中、テスラのオプティマスは大丈夫なのでしょうか。これから予想される競合との激しいロボット開発競争に勝てるのかと心配になりますが、じんべいは大丈夫だと思っています。そう思えるのは、オプティマスには他を圧倒する優位性がいくつもあるからです。
では、続いてテスラの強みを挙げながら、なぜオプティマスが未来のロボット市場をリードする存在になるのかを紐解いてみたいと思います。
・量産化技術とギガファクトリーの存在感
テスラの最大の強みとして真っ先に挙げられるのは、量産化技術とギガファクトリーの存在です。テスラが世界で築き上げた巨大なギガファクトリー群は、オプティマスの量産化において最大のアドバンテージになります。
EVの量産で培った効率的な生産技術やコスト削減のノウハウが、そのままヒューマノイドロボットの生産に応用されます。これにより、テスラは3万ドル以下という価格設定を現実的なものにできる可能性があります。これは生産と販売を拡大する上で大きな競争優位性となります。他社が開発中のロボットがまだプロトタイプ段階に留まる中、テスラは実際に市場投入可能な製品としてオプティマスを提供する準備が整いつつあります。
先述しましたが、今年数千台、3年以内に50万台のオプティマス生産をテスラは目指しているわけですからね。スケールが違いますよね。
・AI学習・推論技術の圧倒的な強み
オプティマスが持つもう一つの大きな優位性は、テスラの自動運転技術(FSD)から引き継がれるAI技術です。FSDで培われたカメラベースの認識技術とエンドツーエンドのAI学習・推論システムは、ロボットが環境を認識し、適切に動作を選択する上で極めて重要です。この技術を搭載したオプティマスは、他社製ロボットに比べて格段に精密な動きや高度な判断が可能になると考えられますね。
・スーパーコンピュータクラスターによるトレーニング能力
そしてテスラは、テキサスにCortexと呼ばれる10万個のGPUを搭載する専用のスーパーコンピュータクラスターを保有し、大規模なAIトレーニングを実施しています。この規模でAIを鍛えられる企業は極めて少ないと言えます。この能力がオプティマスの知能進化を支える柱となっています。多様なシナリオに対応できる高度なAIは、産業用から家庭用まで幅広い用途での利用を可能にするはずです。
ギガテキサスにデータトレーニングセンターを所有(出典:テスラ公式ウェブサイト)
・イーロン・マスクのカリスマ性と規制緩和の影響力
さらに、テスラの成功にはCEOイーロン・マスクのカリスマ性が欠かせませんね。SNSプラットフォームのXで2億人以上のフォロワーを抱えるイーロンの言葉は、市場や技術トレンドに直接影響を与えるほどの力を持っています。そして2025年からは、トランプ政権下での規制緩和による恩恵も期待されています。これにより、テスラはオプティマスの製造・販売プロセスをさらに加速させる可能性があります。
これらの複数の優位性を持つテスラのオプティマスは、他社のロボットに対して大きなアドバンテージを持っているとじんべいは考えています。ただのプロトタイプに留まらず、量産化に向けた現実的な計画と技術力、そして圧倒的な市場影響力を備えたオプティマスは、ロボット産業の未来を牽引する存在となるはずです。市場投入が進めば、AIロボティクスの歴史を大きく塗り替える可能性を秘めていますね。
AIロボットがもたらす未来:テスラとオプティマスの挑戦
イーロンが描く未来は、私たちの生活を根本から変える可能性を秘めています。その中でも特に注目すべきは「ユニバーサルハイインカム」という概念ですね。皆さん、この言葉を聞いたことがありますか? これは、AIロボットが人間の労働を大幅に代替することで、最低限の生活収入を超えた高水準の生活収入を全ての人が享受できる未来を指しています。もし「ユニバーサルハイインカム」が実現すれば、経済や社会の在り方が劇的に再定義される可能性が高いです。
We Robotイベントで参加者と交流するオプティマス(出典:テスラ公式YouTubeチャンネル)
ユニバーサルハイインカムの実現に向けて、テスラが開発するヒューマノイドロボットのオプティマスが重要な役割を果たそうとしています。このテスラのロボットが普及した社会では、家庭や職場の役割が大きく変わることは間違いありません。例えば、オプティマスが子育てや介護を手助けし、教育現場では個別指導のパートナーとして活躍する未来も考えられます。また、家庭内の雑務や体力的負担をロボットが担うことで、人々はよりクリエイティブな活動や自己実現に時間を費やせるようになるかもしれませんね。
さらに、オプティマスの成功は、テスラにとって経済的な意味でも大きな変革をもたらします。今回、お伝えしたように、オプティマス事業だけで年間600億ドル以上の利益を生む可能性があり、これがテスラの1株当たり利益(EPS)を大幅に押し上げます。結果として、株価は数千ドルに達する可能性があり、同社の時価総額を爆発的に引き上げる力を持っています。このような未来が現実のものとなれば、テスラは単なるEVメーカーを超えて、AIロボティクス分野のリーダーとして新たな地位を確立するはずです。
もちろん、テスラがこの未来を実現するには課題もあります。AI技術のさらなる進化や、ロボットを受け入れる文化や制度の整備が必要です。しかし、これまで数々の不可能を可能にしてきたイーロンとテスラには、その実現力があると言えるでしょう。
最後に、皆さんに問いかけです。
オプティマスが私たちの生活にどんな影響を与えると思いますか?
ロボットが主力製品となった未来のテスラを、皆さんはどう見ますか?
テスラとオプティマスの挑戦は、未来を変える鍵を握っているのかもしれません。その行方を一緒に見守り、考えていきましょう。
メイン画像:お客にドリンクを手渡すオプティマス(写真提供元:Tesla, Inc. )
文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約2万2600人。 X(Twitter)フォロワー数:約9600人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。