特集&エッセイ

人型ロボット時代が来る! テスラのオプティマスはロボット開発競争に勝ち残れるか?(前編)

電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第20回

by じんべい

イーロンが最先端テクノロジーイベント、CESで衝撃発言!

 こんにちは、じんべいです。

 先日、ラスベガスで開かれた世界最大級の最先端テクノロジーイベント、CESでテスラのCEOイーロン・マスクが衝撃の発言をしました。それは「人型ロボットはこれまでの人類の歴史上、最大の製品になる可能性がある」という話です。さらに将来、世界には最大で300億台もの人型ロボットが存在して、人ひとりに対して少なくとも3台、多ければ4台、5台といった割合になるっていうんですよね。そんな未来が来ると、経済の考え方もガラッと変わって、最低限の生活収入を超えた「ユニバーサルハイインカム」が実現できるかもしれないと、イーロンらしい大胆な予測をしていました。

 こちらがテスラが現在開発を進めている、オプティマスと呼ばれる人型ロボットです。

テスラの第2世代オプティマス(出典:テスラ公式ウェブサイト)
テスラの第2世代オプティマス(出典:テスラ公式ウェブサイト)

 最新の第2世代のオプティマスは、22自由度の手を搭載していて、人間の手に近い見た目や感触を再現するよう設計されているんですよね。下記の写真が昨年10月のWe Robotイベントで披露された22自由度の手です。

2024年10月のイベントで披露されたオプティマスの手(出典:テスラYouTube公式アカウント)

 オプティマスの最新の手は人間に近い繊細な動きを実現しています。これにより、工場での精密作業や日常のタスクを柔軟かつ効率的にこなすことも可能。AIとハードウェアの融合で、柔軟性と正確性を兼ね備えた高度なロボット工学の成果と言えますね。

 イーロンもこのオプティマスについて、現時点で世界で最も高度な人型ロボットだと自信満々に語っています。そして驚くべきことに、テスラは今年、オプティマスを自社工場に数千台テスト導入する予定。この導入が成功すれば、来年には生産規模を10倍に拡大して最大5万台を目指すと。さらに、3年以内には50万台の生産が可能になるというんですよね。もうスケールが桁違いです。もしこのペースでオプティマスの生産が進めば、将来的にはテスラの電気自動車の生産台数を超える日が来るかもしれません。そうなると、オプティマスがテスラの主力商品になる未来が現実になる可能性もありますよね。

 でも今のところ、マーケットはまだこのAIロボット事業の価値を株価に織り込んでいないようです。投資家は正確にその価値を評価できていないためです。では、もしEV事業を超えてAIロボット事業として認知されるようになったら、テスラはどれほどの成長を遂げることになるのでしょうか。また、この分野でテスラのライバルとなる企業はどこになるのかも気になりますよね。そして人型ロボット産業という激しい競争の中で、テスラが成功する勝算はどれくらいあるのでしょうか。今回は、こういった疑問に焦点を当てながら、テスラのヒューマノイドロボット事業について深掘りしていきたいと思います。どうぞ最後までお付き合いください。

オプティマスの技術と可能性

 昨年10月、テスラが開催したイベントの中でイーロンは「オプティマスは犬の散歩や飲み物の提供ができ、あなたの友達になることも可能だ」と語っていました。数年前だったら、テスラがそんな高度な技術を持った人型ロボットを開発できる力なんてないと大半の人が思っていたに違いありません。しかし、イベントではオプティマスが現実世界で、会場内を自律的に歩き回り、来場者と写真を撮ったり、ギフトバッグを配ったりするなど、人と自然に交流する姿を披露しました。

 なかでも注目を集めたのは、その手の進化でしたね。冒頭でも述べましたが、オプティマスの手は、自由度が以前の11から22に倍増し、より滑らかで人間らしい動作が可能になりました。この技術、実際に目の当たりにすると本当に驚かされます。ここまでオプティマスの手は器用になったのかと。

未来ではオプティマス一家に一台の時代が来る?(出典:テスラ公式ウェブサイト)
未来ではオプティマス一家に一台の時代が来る?(出典:テスラ公式ウェブサイト)

 テスラが公開した動画の中では、オプティマスが自律的に階段を登ったり、自分で充電ドックを探して充電を始めたりする姿が映っていました。これってすごいことですよね? ここまでテスラのロボットは進化したんだと感動すら覚えます。アクチュエーターやセンサーといったハードウェア、そして制御システムが着実に進化していることがよく分かります。それに加えて、ロボタクシーとオプティマスが同じテスラ製の4680バッテリーやカメラ、チップを使っているんですよね。この一貫した技術力が、やっぱりテスラの強みだなって感じます。

 そして特筆すべきは、テスラがこのオプティマスを約3万ドル、つまり450万円ほどの価格で提供することを目指している点です。これって驚きの価格設定ですよね? 車と同じくらいの値段で、工場での作業から家庭の家事まで何でもこなしてくれるロボットが手に入るんですからね。そんな未来、想像しただけでワクワクしますよね? 自分も欲しいって思う人、きっと多いはずです。

 でも、テスラの目指すところはそれだけじゃないんです。ただ便利なロボットを作るだけじゃなく、「世界を持続可能なエネルギーへと移行させる」という壮大なミッションを支える製品として、このオプティマスを位置付けています。労働力を補完して生産性を上げるだけでなく、商品やサービスのコストを下げていく。それによって、より豊かで持続可能な未来を作ろうとしているんですよね。未来の生活がどう変わるのか、テスラがどんなインパクトを与えるのか。こういう話を聞くと、ますますオプティマスの可能性に期待が膨らみます。

テスラのロボット事業のスケール感

 では続いて、テスラの人型ロボットのオプティマスが、どれだけの収益ポテンシャルを秘めているのかについて見ていきたいと思います。

 最近の調査や市場予測を見ると、ロボット産業がいかに急速に拡大しているのかがよくわかります。例えば、ゴールドマンサックスが2024年に発表した調査によると、人型ロボット市場は将来5兆3000億円規模にまで拡大するとのことです。この数字、前年の予想から6倍以上の急成長なんですよね。そしてこの成長を牽引しているのが中国です。10年前に1万3000社だったロボット関連企業が、現在では約17万社にまで増加しているんですよね。10年で17倍ですから、本当に驚きです。

 さらに、米投資ファンドのアーク・インベストは、人型ロボットが家庭や工場での労働を代替することで、24兆ドル以上の収益機会をもたらすと大胆に予測しています。このような急成長が期待できる市場の中で、テスラのオプティマスはどれほどの価値を生み出すのでしょうか。

汎用ロボットは将来24兆ドルの収益機会をもたらす!(出典:ARK-Invest-Big-Ideas-2024)
汎用ロボットは将来24兆ドルの収益機会をもたらす!(出典:ARK-Invest-Big-Ideas-2024)

 そこで簡単な試算をしてみました。オプティマスの1台あたりの価格はテスラの発表では将来3万ドルで販売したいと言っているので、その数字を使いたいと思います。オプティマスの利益率は、電気自動車よりも効率的に製造できると思うので、電気自動車の利益率を少し上回る20%と仮定すると、販売台数ごとの収益と利益はこうなります。

10万台販売: 総収益30億ドル、利益6億ドル

50万台販売: 総収益150億ドル、利益30億ドル

300万台販売: 総収益900億ドル、利益180億ドル

1000万台販売: 総収益3000億ドル、利益600億ドル

 このように、販売台数が増えるにつれて、収益と利益も比例して大きくなります。特に1000万台を販売した場合、年間利益は600億ドルにも達する可能性があるんですよね。通常は販売規模が拡大すれば、利益率は低下する傾向がありますが、今回はあくまで参考までということで利益率は変えていませんので、その点はどうかご容赦を。

 一方で、こんな壮大なテスラのプラン、実現可能なの? 年間1000万台のオプティマスを作って販売するなんて、そんなことあり得ない! このように思われる方も多いかもしれません。しかし、先述したように、イーロンは将来世界には300億台の人型ロボットが存在すると予想しているので、その予想が実現すれば、年間1000万台というのは十分あり得る数字だとじんべいは考えています。

 人型ロボットは自動車よりも需要が高いことは間違いありません。この規模でのオプティマスの製造・販売が実現すれば、テスラの収益構造は劇的に強化され、ロボット事業が新たな収益の柱となる未来が見えてきます。

 テスラ投資をされる方は、「じゃあテスラが年間1000万台販売できて、600億ドルの利益を上げるとしたら、テスラ株価にどんな影響を与えることになるの?」と、株価成長が気になりますよね? こちらもざっくり計算してみたいと思います。

 まず、テスラの発行済株式数は2024年第3四半期時点で約31.98億株となっています。オプティマス事業が年間600億ドルの利益を上げると仮定すると、EPS(1株当たり利益)は約18.76ドルに達する可能性があります。

次に、このEPSをもとにして今後オプティマス事業によってテスラの株価がどれだけ増加するのか計算してみました。PER(株価収益率)が異なる場合の株価は以下の通りです。

PER 30倍の場合: +563ドル

PER 50倍の場合: +938ドル

PER 100倍の場合: +1876ドル

 この計算には電気自動車販売やエネルギー事業、ロボタクシービジネスの収益は一切含まれていません。これらを考慮すると、テスラがEVメーカーからAIロボティクスカンパニーへと進化した際には、株価が数千ドルに達する可能性も十分に考えられます。オプティマスがこれほどの収益を生む製品に成長するかどうか、その成否がテスラの未来を大きく左右すると言えますね。

 今回はここまでです。次回の後編では、台頭するライバル企業が開発を進める人型ロボット製品との比較を通じて、オプティマスが競争の中で生き残ることができると考えらえる理由を解説します。後編もぜひお楽しみに!

メイン画像:人型ロボットが当たり前になる未来のイメージ(Canva)

文・じんべい

日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約1万9000人。 X(Twitter)フォロワー数:約8000人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

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