米運輸省道路交通安全局(NHTSA)のジョナサン・モリソン局長は2026年9月17日、ピッツバーグで開催された「AI Horizons PGH Summit」で、自動運転システム(ADS)の性能そのものに焦点を当てた新たな連邦安全基準の策定を進めていると発表しました。ウェイモやZoox、サイバーキャブなどのロボタクシーサービスが米国各地で拡大する中、より大規模な展開を見据えた基盤づくりの一環です。
従来の基準は「特定の物理的な装置やデザインを備えているか」を問うものでしたが、NHTSAは今後、「自動運転車が実際に安全に走行できるかどうか」に焦点を当てた規制へと転換したい考えです。モリソン局長は、基準には測定可能な運転能力(コンピテンシー)と、それを検証する再現性のある試験方法を盛り込むべきだと述べています。
今回NHTSAが合わせて発表した主な取り組みは以下の通りです。
・SAE(自動車技術会)と共同で産官連携の「ASCENDコンソーシアム」を9月16日付で発足、AV性能基準の策定を加速
・全米共通の自動運転車「コンピテンシー基準」を策定
・ハンドルやペダルなど従来の運転装置を持たない車両に対応するため、連邦安全規則を改定
・主要な連邦自動車安全基準(FMVSS)5項目について改正を提案(今後さらに追加予定)
・実証段階から「中規模の無人配車サービス展開」への移行を後押しする新たなガイダンスを策定中
・緊急対応者(消防・警察など)との連携、遠隔支援、安全管理システムに関する基準も策定中
・車両の個別設計より安全性能を重視する方針を優先
・自動運転車が不合理な安全リスクをもたらす場合は、引き続き調査・摘発・リコールを実施
NHTSAは、ある自動運転車が「安全な運転者」と言えるかどうかを判断するための、全米共通の枠組みづくりを目指すとしています。
今回の方針転換は、各社の置かれた状況に応じて異なる意味を持ちそうです。
テスラは9月にオースティンでロボタクシー「サイバーキャブ」の商用展開を始めた直後、ハンドルやペダルを持たない同車両の自己認証についてNHTSAの調査を受けています。性能基準への転換が実現すれば、こうした無人専用設計車両の合法性を巡るグレーゾーンが整理され、テスラにとって追い風となる可能性があります。
ウェイモは現状、ハンドルやペダルを備えた改造車両(ジャガーI-PACEなど)で運行しているため、無人専用設計車両向けの規制緩和そのものからの直接的な恩恵は限定的です。ただし、ニューヨーク州が展開計画を退けるなど州ごとに対応がまちまちな規制の「パッチワーク」状態が事業拡大の足かせとなってきただけに、全米共通の性能基準が整えば、州単位の交渉を避けて展開しやすくなる可能性があります。なお同社は6月、高速道路の工事区間への誤進入を理由に約3900台をリコールしており、NHTSAは今後も調査・リコール権限は行使し続ける方針です。
アマゾン傘下のZooxは7月、ハンドル・ペダルなしの専用設計ロボタクシーとして初の商用適用除外を取得しましたが、認可台数は2500台にとどまり、自社で構築した1万台規模の生産能力をフルには生かせていません。NHTSAが目指す性能基準ベースの恒久的な枠組みが整えば、一時的な適用除外や台数上限に頼らずに事業を拡大できる道が開ける可能性があります。

