特集&エッセイ

オプティマスの進化から見えてきた、感情を持った将来のテスラEVとは?

EVcafeで考える 第12回

by がす

 イーロン・マスク 「テスラはAGI(人間に近い人工知能)の一端を解明できたかもしれない。車には心がある。巨大な心ではないが、それでも心を持っている」

 

 こんにちは、がすです。

 先日、テスラが「テスラのオプティマスは物体を自律的に仕分けできるようになりました🤖」と、いきなり度肝を抜く動画をX(旧Twitter)で公開しました!

https://twitter.com/i/status/1705728820693668189

 それは、テスラで開発中のAIのロボット「オプティマス」の進化状況をアップデートしたものでした。オプティマス自身が自分の手首や指の関節を見て、正確な位置に調整(キャリブレーション)した後、ブロックを手に取って色分け作業していきます。その滑らかな手や指の動きも素晴らしいのですが、この色分け作業は人間がルールをプログラムしたのではなく、オプティマスのAIがニューラルネットワークのトレーニングによって学習したことを、オプティマスの目(カメラ)からの映像のみで判断して色分け作業を行なっています。

滑らかな手や指の動きでブロックの色分け作業もできるオプティマス(提供元:Tesla, Inc. )
滑らかな手や指の動きでブロックの色分け作業もできるオプティマス(提供元:Tesla, Inc. )

 

 これの何がすごいポイントなのかと言いますと、ニューラルネットワークの学習によって、学習したタスクを単に真似するだけではなく、オプティマスが「示された」タスクから構造と意味法則を推論していくようになることです。

 このビデオにある通り、オプティマスが人間の子供のように、映像などから学習してブロックの色分け作業ができるようになったとすれば、それは、その学習で習得した作業の意味や法則から、オプティマス自身で考えて判断し、その次にすべき作業もできるようになるということです。

 つまり、今後オプティマスは未知のタスク対しても、タスクの目標と、環境条件から、それを達成するための戦略を推論できるようになる。これこそがテスラの目指す本物のAI(AGI)です。

オプティマスは、人間のように自分で考え行動できるようになる(提供元:Tesla, Inc. )
オプティマスは、人間のように自分で考え行動できるようになる(提供元:Tesla, Inc. )

 

 前回のEVcafeの私の記事で、イーロン・マスク率いるテスラがエンドツーエンドのニューラルネットで、AIが学習し、ハンドルやペダルを直接制御して自動運転する、本物のAIによる自動運転を完成させたこと。そして、それを自社の完全自動運転FSD(Full Self-Driving)の次期バージョンでリリースを予定していることをお伝えしました。

https://evcafe.jp/evcafe-jp-article-20230919-tesla-fsd-robotaxi/

 今回のオプティマスの発表から、テスラはエンドツーエンドのニューラルネットで、AIが学習するテクノロジーを、自社のテスラ車だけではなく、すでに人型ロボットのオプティマスにも適用しているということがわかりました。

 テスラは世界で400万台走るカメラ付きのテスラEVから入手した、人間の運転方法を記録した数十億フレームのビデオを活用し、数千億円のスーパークラスター(スパコンの集合体)でニューラルネットワークをトレーニングをした(さらに、現在も自社でスーパーコンピューターの半導体Dojoまで開発、生産してトレーニングを加速させています)ことで、A Iは運転する時(=自動運転時)にその学習で習得した作業の意味や法則から、運転中どう対応すればいいか? を推論し判断していきます。

スーパーコンピューターの半導体”Dojo”
スーパーコンピューターの半導体”Dojo”

 例えば、前回の記事であったイーロン・マスクがデモで見せた「自動運転で工事区域をスムーズに通過し、さらには自転車に道を譲る」という行動は、「自転車に道を譲りなさい」という人間の書いたプログラムのコードはひとつも無く、AIがトレーニング結果から、AI自身で推論して「自転車に道を譲るべき」と判断したのです。

 このようにテスラのエンドツーエンドのニューラルネットで、AIが学習する同じテクノロジーを使って、人型ロボットのオプティマスは、会社や工場、家庭という現実世界で起こることを推理、判断して作業を行うようになり、テスラのEVは交通世界で起こることを推理、判断して自動運転するようになります。つまり我々が乗っているテスラのEVは交通用のAIロボットであるとも言えるのです。

今後のAIによる新しいテスラEVについて

 このオプティマスのデモは、頭脳であるAI面とは別に、ハード面のアクチュエーター(関節など動力や動き)等のいわゆる「ロボット工学」分野による技術も素晴らしいと言われていますが、今回はAIの話だけにフォーカスしたいと思います。

 その中で、いくつかテスラがまだ明らかにしていないことがあります。

 ひとつはオプティマスに対するニューラルネットワークのトレーニング方法です。テスラがオプティマスのビデオを公開した後、それを見たNVIDIA AIの研究員ジム・ファン氏がテスラのオプティマスのデモを独自解析しました。そこには、遠隔操作やモーションキャプチャーでの学習があるようです。

 もうひとつが今まで書いてきた「未知のタスク対しても、タスクの目標と、環境条件からそれを達成するための戦略を推論できる」レベルです。自動運転に関して市販車のAIが推論して実際に運転するということ自体、史上初だと思うのでレベルの基準すらありませんが、簡単に言うと「頭の賢さ」です。

 これはイーロン・マスクやテスラの自動運転開発チームしか分かりません。

 なぜ、ここに注目しているかと言いますと、エンドツーエンドのニューラルネットワークで、AIが学習して推論、判断して自動運転するテクノロジーはテスラがかなり先行していると思いますが、いずれ他社から同じものが出てくるはずです。それはイーロン・マスクも分かっています。急ぐ理由として本物のAIによる世界初の自動運転、ロボタクシーが、年間2000万台販売へ向けたスケーリングという、テスラの最終目標のための重要なステップとなるのは間違いないからです。

テスラロボタクシーのコンセプト
テスラロボタクシーのコンセプト

 その後、他社からも本物AIでの推論できる自動運転が出てきた場合は、テスラのAIと自動運転での「頭の賢さ」対決になるはずです。そして将来これがEVの売れ行きを左右するかも知れません。イーロン・マスクはAIによる自動運転は将来、超人的(スーパーヒューマン)で人間の1000倍以上、運転が上手くなると言います。

 AIによる自動運転が実現したことでテスラが気づいた新しい課題は、AIが「交通ルールを守らない可能性がある」という話があるように、よりAIの運転というのは「人間くさい」「感情があるような」ものになるような気がします。

 新しいテスラのEVは他社と頭脳の「賢さ」を競うようになるかも知れませんが、もっと言うと単に「賢い」ではなくて、テスラの自動運転EVは他社の自動運転と違って人間の持つような「優しさ」があるから好きなんて言われるかも知れません。例えば、テスラの自動運転は子どもが横断歩道を渡るのに気が付いていない対向車にクラクションで教えたとか。テスラのロボタクシーはお年寄りが乗ると、交差点ではゆっくり曲がり、案内の音声が大きくなるとか。

 そういう「賢さ」以上の、何か人間のような自動運転がAIで生まれると思うとなんだか未来ぽくて、わくわくしますよね(笑)

 でもそれは、僕らの今のリアルな運転がニューラルネットのトレーニング素材になるわけなので、結局のところ、テスラオーナーの「優しさ」が問われているのかも知れませんね。

 EVcafeでは、気になるテスラの「AI、オプティマス」について引き続き独自の視点で追いかけていきますので、お楽しみに!

がす(来嶋 勇人)

 福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になりテスラでハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。

 プライベートでは2024年からイーロン・マスクの公式パロディアカウント(フォロワー140万人)からオファーをもらいイーロン・マスク(パロディ)公認のAIデザイナーとなり、ハイクオリティなAI画像をイーロン・マスク(パロディ)に提供中。そのメールをやりとりしているイーロン・マスク(パロディ)はイーロン・マスク本人だと思っている。

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