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サイバーキャブ、従業員試乗スタート——ハンドルもペダルもない量産車が、いよいよ人を乗せて走り始めた

2026 7/16
電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣
2026年7月16日
ロボタクシー専用車両「サイバーキャブ」に乗り込むテスラ従業員(クレジット:テスラ)

電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第55回 

by じんべい

 2026年7月11日、テスラの公式Xアカウント「Tesla Robotaxi」が「ギガテキサスからの朗報」というシンプルなテキストとともに、47秒の動画を公開しました。映っていたのは、ハンドルもアクセル・ブレーキペダルも一切持たない、量産仕様そのもののサイバーキャブ。テスラの従業員が実際に乗り込み、スマートフォンアプリで目的地を設定しながら公道を走る映像です。

Cool news from Giga Texas pic.twitter.com/gvbG456Tzw

— Tesla Robotaxi (@robotaxi) July 11, 2026

 これまで公道で確認されてきたサイバーキャブのほとんどは、緊急時に人間が操作できるよう手動の操作系統を残した検証用車両でした。今回はそれとは明確に違う。正真正銘、量産設計のままの車両が人を乗せて走った——この一点が大きな意味を持ちます。テスラの発表によると、乗客はアプリを通じて車内の音声・映像・空調・目的地まで自由に操作できるとのことで、サービスとしての完成度の高さも伝わってきます。

「削除→再アップ」に透けて見えるテスラの慎重さ

 ただ、この発表には少し面白い後日談がありました。最初にアップロードされた動画には、従業員が車内で映画を鑑賞したり、リラックスしてくつろいでいる様子がしっかり映っていたのですが、テスラはこの動画を一度削除。該当シーンを取り除いた上で、より控えめなタイトルに変えて再アップロードしたのです。

 この削除の背景には、じんべいは2つの理由が考えられると思っています。

 一つは、まだ正式な商用サービスが始まっていない段階で「乗客が映画を見てくつろいでいる」映像が独り歩きすると、本来伝えたかった技術的なマイルストーンよりもその印象が先行してしまうリスクです。

 もう一つは、規制当局への配慮。現在NHTSAでは、ハンドルやペダルを持たない車両に関する連邦規則の整備がまさに進行中で、パブリックコメントの募集中という微妙なタイミングに、従業員が「遊んでいる姿」を前面に出すのは得策ではないと判断した可能性があります。真相はわかりませんが、見せ方への慎重さというテスラらしい一面が垣間見えたエピソードでした。

予告から「ラースタイム」を経てようやく届いた朗報

 実はこの発表には伏線がありました。テスラの車両エンジニアリング担当VP、ラース・モラビー氏が7月7日に「ギガテキサス周辺のスケーリングに関わるクールなお知らせがある」と事前予告していたのです。多くのテスラファンや投資家は生産拡大や本格投入の発表を期待しましたが、当日に出てきたのは環境・社会報告書(インパクトレポート)。肩透かしを食らった格好で、株価の反応も冴えないものでした。

 しかし、予告から数日遅れて届いたこのサイバーキャブ従業員試乗のニュース——「イーロンタイム」ならぬ「ラースタイム」ではありますが、実質的な進展が伴っていたという意味では、結果としては前向きに受け止めています。

スタッフと打ち合わせを行うテスラ車両エンジニアリング担当バイスプレジデント、ラース・モラビー氏(クレジット:テスラ)
スタッフと打ち合わせを行うテスラ車両エンジニアリング担当バイスプレジデント、ラース・モラビー氏(クレジット:テスラ)

ダラス・ヒューストンで数百台が待機中——Xデーはいつか

 

 最近、テスラファンからの目撃情報として、量産型サイバーキャブがテキサス州の主要都市で大量に待機しているという報告が相次いでいます。ダラスでは50台前後、ヒューストンでは専用のロボタクシー運用拠点に約90台が集結しているのが確認されており、単なるテスト車両ではなく、投入直前の在庫配置に近い印象を受けます。ギガテキサスの出荷待機エリアにも数百台規模のサイバーキャブが確認されており、生産ペースはかなり上がってきているようです。

 じんべいとしては、まずオースティンで既存のモデルY版ロボタクシーの一部をサイバーキャブに置き換える形での限定的な投入が、早ければ今月末から8月にかけて始まる可能性があると予測しています。ダラス・ヒューストンを含む複数都市への本格展開は、年内から遅くとも2027年序盤には実現するのではないかと見ています。テキサス州レベルでのレベル4自動運転の自己認証はすでに完了しており、連邦レベルの規制整備も着実に前進しているのが根拠です。

規制の最後の壁と、モデルS・X終了が示すテスラの本気

 連邦レベルの規制についても、重要な動きがあります。NHTSAは6月25日に、人間が一切運転しない前提で設計された車両への手動ブレーキペダルの装備義務を撤廃する規則案を発表しました。ハンドルの義務はすでに撤廃済みのため、これが確定すれば「ハンドルもペダルもない」姿でのサイバーキャブの全国展開に向けた最後の障壁がほぼ取り除かれることになります。パブリックコメント期間は7月27日まで設けられているため、最終的な規則確定にはもう少し時間がかかりますが、方向性は明確です。

 そして忘れてはならないのが、テスラが今年モデルS・Xの生産を終了し、フリーモント工場をオプティマスの生産拠点へ転換するという大きな決断をしたことです。イーロンは「感慨深い時代の終焉だ」と述べる一方、今回の決断は必然的な選択だったと説明しています。これはつまり、テスラがサイバーキャブとオプティマスという2つの製品に、会社全体のリソースを大きく集中させ始めているということです。

最後のモデルS・モデルXの引き渡しを記念して開催された「Signature Delivery Event」(クレジット:テスラ)
最後のモデルS・モデルXの引き渡しを記念して開催された「Signature Delivery Event」(クレジット:テスラ)

 サイバーキャブは、専用設計ゆえの低い生産コストと、量産EV史上最高水準の電費が示す低い運用コストという特性を持つ車両です。稼働率の高いロボタクシー用車両に生産ラインを集中させることで、投下資本に対するリターンは大きく改善する可能性があります。WaymoなどのライバルEVと比べた際の車両・運用コストの優位性が競争力を左右する中で、これは単なる新型車の投入ではなく、テスラの収益構造そのものを変えうる製品戦略だとじんべいは見ています。

投資家目線で見たサイバーキャブの意味

 ここで少し投資家の視点から整理しておきたいと思います。テスラがロボタクシー事業で先行するWaymoと根本的に異なるのは、コスト構造です。Waymoのジャガーは1台数千万円とも言われる車両コストがかかるのに対し、サイバーキャブは製造目標が1台約3万ドル(約480万円)と圧倒的な低コストを目指しています。

 さらに注目すべきは運用コストです。テスラの2025年インパクトレポートによると、サイバーキャブの電費は6.1mi/kWh(約165Wh/マイル)を見込んでおり、これは現在販売されている量産EVを大きく上回る最高水準です。比較対象となるモデルY AWDは4.3mi/kWh、他社EVは3.2~3.5mi/kWh程度であることを考えると、サイバーキャブは1回の充電でより長い距離を走行できるだけでなく、1マイル当たりの電力コストも大幅に低く抑えられます。

 ロボタクシーは1日に何百キロも走行し続けるビジネスモデルであるため、わずかな電費の差が年間では莫大な利益の差になります。テスラは車両価格だけでなく、エネルギーコストやメンテナンスコストまで含めたトータルコストを徹底的に下げることで、競合他社には真似しにくい収益モデルを構築しようとしているのです。

 この車両・運用の両面での優位性が本格稼働の段階に入れば、テスラの利益構造を大きく塗り替える可能性があります。今回の従業員試乗は、その未来が着実に現実へ近づいていることを示す重要な一歩と言えるでしょう。

テスラ従業員がテスト乗車するサイバーキャブの車内(クレジット:テスラ)
テスラ従業員がテスト乗車するサイバーキャブの車内(クレジット:テスラ)

Q2決算でイーロンは何を語るか

 テスラは7月23日(日本時間)にQ2決算発表を控えています。今回のような従業員試乗の進展や、ダラス・ヒューストンで確認されている大量のサイバーキャブ待機車両の意図について、経営陣の口から直接説明があるかどうかは大きな見どころです。量産開始の時期や生産規模、展開都市、さらにはサービス拡大のロードマップまで、どこまで具体的な発言があるのか注目されます。

 特に市場が知りたいのは、「ロボタクシー事業がいつ利益に貢献し始めるのか」という点です。サイバーキャブは単なる新型車ではなく、テスラを自動車メーカーからAI・モビリティ企業へと変える中核事業です。今回の決算では足元の販売台数や業績だけでなく、その先にあるロボタクシー戦略の進捗が、投資家の評価を大きく左右することになりそうです。じんべいとしては、決算当日にイーロンがロボタクシー戦略についてどこまで具体的に語るのか、そして市場がそれをどう評価するのかに注目しています。

文・じんべい

日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約3万人。 X(Twitter)フォロワー数:約1万人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

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