電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第52回
by じんべい
スペースXのIPO(株式公開)が2026年6月12日に決定しました。ロケット打ち上げの会社というイメージを持っている方も多いと思いますが、今のスペースXは全く違う姿に変貌しつつあります。じんべいが今回のIPOで注目しているのは、ロケット事業でも宇宙旅行でもありません。「軌道上データセンター(宇宙空間に浮かぶAIデータセンター)」という、まだほとんどの人が知らない超巨大ビジネスの可能性です。
スペースXに投資すべきか、それともテスラを持ち続けるべきか——今回はじんべいなりの考察をお届けします。
1. スペースXの事業内容——今の稼ぎ頭は何か
スペースXのIPO提出書類(S-1)によると、2026年Q1(1〜3月)の総収益は約46.9億ドル(約7000億円)。3つの事業がこれを支えています。
最大の稼ぎ頭は「コネクティビティ事業」、つまりスターリンク(衛星インターネット)です。Q1だけで約32.6億ドル(約5000億円)を稼ぎ、全体の約69%を占めています。世界中に展開した低軌道衛星ネットワークが個人・法人・政府に高速インターネットを提供するこの事業は、現在スペースXで唯一の黒字事業です。
2番目が「AI・コンピュート事業」で、Q1は約8.2億ドル(約1200億円)、全体の約17%。スペースXは2026年2月にxAIを吸収合併し、その中核インフラである超大規模AIデータセンター「コロッサス(Colossus)」を手に入れました。エヌビディアのGPUを22万台以上搭載し、300メガワット超の電力容量を持つこの施設を外部企業に貸し出して収益を得るビジネスです。アンソロピックとは月額12.5億ドル・2029年5月までの長期契約をIPO直前に締結。イーロンは「他のAI企業にも同様のディールを用意する」とXで明言しており、今後の外部契約拡大が大きな収益ドライバーになる可能性があります。
3番目が「ロケット打ち上げ事業」で、Q1は約6.2億ドル(約900億円)、全体の約13%。NASAや国防省などの政府契約が中心で、スターシップの開発投資もここに含まれます。

今のスペースXを一言で表すなら、「スターリンクが稼いで、AIが伸びて、ロケットが夢をつなぐ」会社です。
2. 将来、軌道上データセンターがもたらす莫大な収益
スペースXの本当のポテンシャルは、まだほとんど顕在化していません。その最大の切り札が「軌道上データセンター」です。
地上のAIデータセンターには大きな制約があります。電力と冷却です。AIを動かすには膨大な電力が必要で、発熱を冷やすためのコストも巨大。これが地上データセンターの最大のコスト要因です。
宇宙ではこの制約がほぼなくなります。太陽光は24時間365日当たり続け(夜も曇りも季節もない)、発電効率は地上の5倍以上。熱は宇宙空間に放射するだけで冷却できます。イーロン・マスクはこう言っています。
「2〜3年以内に、宇宙でのAIの展開コストが地上を下回るかもしれない。」
具体的にはスターシップで大量の小型AIサテライト(1機あたり約100キロワットのコンピュート)を軌道に打ち上げ、地上のクラウド事業者(Google・Microsoft・Metaなど)にAI処理能力を売るというビジネスモデルです。スペースXのS-1提出書類ではAI全体の市場規模を26.5兆ドルと見込んでおり、軌道上コンピュートがその大部分を解禁する「ゲームチェンジャー」と位置づけています。

成功した場合の試算では、2030〜2035年頃に年間数百億〜数千億ドル規模の売上が見込まれます。しかも電力・冷却コストがほぼゼロになるため、粗利率は70〜90%超という極めて高い収益性が期待されます。
もちろん、技術的にはまだ未証明の領域です。放射線耐性、熱管理、通信遅延など解決すべき課題は残っており、S-1でも「商業的に成功しない可能性がある」と明記されています。ただ、スターシップの大量打ち上げとテラファブによるチップ自給が揃えば、この構想は一気に現実味を帯びます。
3. エヌビディア超え、時価総額5兆ドル超えは可能か?
現在のエヌビディアの時価総額は約5.2兆ドル(約800兆円)。FY2026の年間売上は約2160億ドルで、純利益率は約55%という驚異的な数字を誇ります。
スペースXのIPO時の評価額は1.75〜2兆ドル程度が見込まれています。ではエヌビディアを超えられるか——。
じんべいの見方では、軌道上データセンターが本格稼働する2030年代にはあり得る話だと思っています。その理由はビジネスモデルの違いにあります。エヌビディアは「AIチップという部品を売る会社」です。一方スペースXは「AI処理というサービスを提供する会社」になろうとしている。
部品を売るより、サービスを提供する方が継続的な収益になりやすい。しかも電力・冷却コストがほぼゼロという圧倒的なコスト優位性があれば、地上のデータセンター事業者より安く・高い利益率でAI処理を提供できます。
エヌビディアが「AIの心臓部(チップ)」なら、スペースXは「AIの究極の工場(軌道上最安データセンター)」を目指しています。成功すれば、エヌビディアのチップをスペースXが大量に宇宙で使うという共生関係にもなり得ます。時価総額5兆ドル超えは夢物語ではありません。ただし、前提はスターシップの大量運用と軌道上データセンターの技術実証です。
4. テスラ投資とスペースX投資、どちらが早く株価が倍になるか?
さて、最も気になる問いです。じんべいなりの考えを正直にお伝えします。
スペースXの魅力は語ってきた通りです。スターリンクという稼ぐ基盤があり、AI事業という爆発的アップサイドがある。しかしIPO直後の評価額はすでに1.75〜2兆ドルという高い水準からのスタートです。軌道上データセンターという最大の成長ドライバーは、まだ技術的に未証明であり、本格的な収益貢献は2030年代以降になる可能性が高い。
一方のテスラ。正直に言えば、過去5年は厳しい時期もありました。でも、今のテスラは違います。10年かけて育ててきた自動運転事業がいよいよ収益化の入口に差し掛かっています。ロボタクシーは複数都市で走り始め、FSDのアクティブ契約数は前年比51%増の128万件に到達。さらにオランダでの承認取得など、各国でFSD展開に向けた動きも加速しています。

さらに今年から量産が始まるオプティマスは、将来年間数千万台の出荷も見込める事業です。競争は激しいですが、人間と同じ形で同じ作業ができるヒューマノイドロボットが普及すれば、それは人類史上最もスケールするプロダクトになる可能性があります。
今後5年先を見たとき、株価が先に倍になりそうなのはテスラだとじんべいは考えます。ロボタクシーの本格稼働、FSD普及率の拡大、オプティマスの初期量産——これらは「5年以内に起こりうる具体的な話」です。スペースXの軌道上データセンターが花開くのはその先の話でしょう。
ただし、長期(10年以上)で見たときはスペースXの方が大化けする可能性は十分あります。両社はイーロンのエコシステムの中で連携しており、テスラの勝利がスペースXを助け、スペースXの成功がテスラを助ける関係にあります。理想はどちらも持つことかもしれません。
5. まとめ
スペースXは今や単なるロケット会社ではありません。スターリンクという稼ぐ基盤を持ちながら、軌道上データセンターという人類未踏の巨大ビジネスを目指す、全く新しい形の会社です。6月12日のIPOは、その壮大な物語に乗る一つのチャンスと言えるでしょう。
テスラかスペースXか——どちらが正解かは誰にもわかりません。ただ、少なくともどちらも「退屈な投資」では絶対にありません。じんべい自身もテスラを持ちながら、スペースXのIPOを真剣に検討しています。この壮大な物語の行方を、これからも一緒に追っていきましょう。ただし、投資判断はあくまでご自身で慎重に。

文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約3万人。 X(Twitter)フォロワー数:約1万人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

