2024年6月25日、BYDオートジャパンは、BEVスポーツセダンの「シール」の日本発売を開始、その記者発表会を開催しました。
注目の中、日本で発表されたBYDシールとは、どんなEV?
記者発表の会場は、東京都原宿の明治通り沿いにある「WeWork アイスバーグ」の1階に設けられたオープンスペース。原宿に集まった買い物客やインバウンドの旅行客が行き交う活気あふれるロケーションにあるプロモーション会場です。
建物の前には、シールのキャッチコピー「PERFECT OR NOT」をアピールするイメージ動画が流れるモニターと、シールを試乗した感想が書かれたPOPが設置され、その前にBYDのコスモスブラックのシールを展示。道ゆく人々も興味深げにBYDの新しいスポーツセダンを覗き込んでいました。
また、記者発表の会場には多くのマスコミが集まり、BYDの新型セダンに対する注目度が伺えました。記者会見には、BYDオートジャパンの東福寺厚樹社長と、同社マーケティング部の遠藤友昭部長が登壇。シール日本導入に関する想いと国内販売における戦略について語りました。
すでにSUVのATTO3とコンパクトモデルのドルフィンの2車種のBEVを日本国内で販売しているBYDですが、今回のシールは、そのフラッグシップモデルとして、同社の日本国内でのイメージを大きく向上させる可能性をもったスポーツセダンです。
では、BYDが満を持して「BYDの潮目を変えるフラッグシップモデル」として市場投入をしたシールとは、どのようなBEVなのでしょうか?
BYDシールのデザインとは?
東福寺社長は「シールの最大の魅力は、多くの人が褒めてくれるデザインのカッコよさ。それこそが、このEVのオーナーになった時の純粋な喜びであり、この車の大きな売りだと思う」と胸を張ります。そんな、スポーツセダンらしいシャープなデザインを生み出したのは、ATTO3やドルフィン同様、アルファロメオやアウディなどの欧州自動車ブランドで実績を積んだ有名カーデザイナー、ヴォルフガング・エッガーが率いるデザインチームです。
そのデザインは、ドルフィン同様の「海洋美学」をコンセプトに広大で穏やかな海からインスピレーションを得た、流線形のなだらかなシルエットとシンプルな造形美が特徴。世界三大デザインショーの一つ「iFデザインアワード」で受賞するなど、海外でもそのデザイン性は高い評価を得ています。
シールは全長4800mm×全幅1875mm×全高1460mm のミッドサイズ 4 ドアセダン。ライバル視されるテスラモデル3の全長4720mm×全幅1933mm×全高1441mmに近いサイズで、BEVらしく広々とした室内が印象的です。
日本でのシールは、後輪駆動のベースモデル「BYDシール」と四輪駆動の「BYDシールAWD」の2グレード展開で、外装カラーは、アークティックブルー、アトランティスグレー、オーロラホワイト、コスモスブラック、シャークグレーの5色。「オーシャンシリーズ」モデルらしくシックな寒色系中心のラインナップとなっています。内装色は、タウマスブラックの1色設定です。
BYDシールの走行性能は?
シールの全輪駆動車AWDモデルは、フロントとリアに異なるモーターを有します。日常使用では主駆動輪でもあるリアに搭載された高効率、低ノイズの永久磁石同期モーターで走り、加速時はより高い安定性と強力なパワーを有するフロントの誘導(非同期)モーターを作動させます。AWDモデルの最高出力はフロントが160kwmでリアが230kW、最大トルクではフロント310N・m、リア360N・mを発揮し、0-100km/h加速は3.8秒。後輪駆動モデルは最大トルク360N・m で0-100km/h加速は5.9秒です。
また、四輪駆動システム「iTAC(インテリジェント・トルク・アダプテーション・コントロール)」では、0.022秒の速さでタイヤの空転を検知、雪道やアイスバーンでも安定した走りが可能となります。
BYDシールの充電性能は?
シールは、事故など外部からの強い衝撃や損傷があった時もバッテリー内部の熱暴走が起こりにくく、なおかつ発火の危険性が極めて少ないリン酸鉄リチウムイオンバッテリーが採用されています。このバッテリーは、4500回の満充電テストをクリアしています。これによって、毎日急速充電を行なっても12年の耐久力が証明されていま
今までは、容量が少なく航続距離が少ないとEVメーカーに敬遠されてきたリン酸鉄リチウムイオンバッテリーですが、BYDはそのバッテリーを板状にした、いわゆるブレードバッテリーを開発。それを車体に隙間なく搭載することで長い航続距離を実現しています。シールの航続距離も、後輪駆動モデルが640km、四輪駆動モデルが575kmとなっています。
そして、シールの受け入れ可能な充電性能は、今までのBYDモデルで最も高い105kWをとなっています。BYD社内で行ったCHAdeMOによる実証実験によると、90kWで30分充電したところ42kwhの充電ができ、受電は常に80kw以上をキープしました。
BYDシールの安全性能は?
シールの大きな特徴の一つが、最新テクノロジーを使った安全性能です。ドライバー注意喚起機能、自動緊急ブレーキ、交通標識認識システム、インテリジェントスピードリミットコントロール、フロントクロストラフィックアラートなど、多くの安全装置が搭載されていますが、そのハイライトはBYDの専売特許とも言える「幼児置き去り検知システム(CPD)」。このシステムは、車内に人や生き物の存在があった場合、周囲の人やドライバーに危険を知らせてくれます。また、高齢者ドライバーが多い日本独自の装備として、ペダルの踏み間違いを抑制する「ペダル踏み間違い時加速抑制装置(AMAP)が追加されています。
シールは、これらの安全技術により、欧州の新車評価プログラムユーロNCAPの安全評価で最高評価の5つ星を獲得しています。
このように先進的なバッテリー技術と最新のドライビングパフォーマンス、充実の安全・快適装備を備えたシール。このスポーツセダンの評価は世界市場でも高く、世界のモータージャーナリストがその年の優秀な車を選ぶワールドカーオブザイヤー2024では3位にランクされ、2022年5月からの世界販売台数累計は23万台をこえる売り上げを記録しています。
日本国内でのBYDシールの販売価格は?
気になる日本でのシールの販売価格は、後輪駆動モデルが消費税込で528万円、四輪駆動モデルのAWDが605万円となっており、現在、日本導入記念価格として限定1000台が後輪駆動495万円、四輪駆動572万円で販売されています。もし、ATTO3、ドルフィンに支給されているCEV補助金35万円が適応されると、実質価格は後輪駆動460万円、四輪駆動537万円となります。
この価格を、テスラモデル3の近いモデル(RWDとロングレンジ)と比較してみると、モデル3の車両価格はRWDが531万3000円、ロングレンジが621万9000円で、CEV補助金が適応されると、RWDが466万3000円、ロングレンジが536万9000円となります。シールの1000台限定価格とお互いの補助金を活用することで、それぞれ近い価格帯の競合モデルとなりそうです。
確かに、この価格帯を考えると完成度の高いパッケージングとなったシール。BYDはこのBEVをパーフェクトと呼び、その完成度を確認するために試乗してもらいたいと、「PERFECT OR NOT」のキャッチコピーを掲げる試乗キャンペーンを実施しています。
一般の試乗会は、第一弾が記者発表の会場となった原宿の「WeWork アイスバーグ」で6月26日から29日までの4日間開催されています。現在、シール試乗会予約は、ほぼ全国の会場で満員となっていますが、7月以降には、正規デーラーで後輪駆動モデルの試乗が可能となる予定です。
「BYDの潮目を変えるフラッグシップモデル」と掲げるこのシールの導入を機に、BYDは、出店計画も加速。2024年末までに90カ所(44カ所が正式なショールームの予定)の販売拠点を確定させ、2025年末までの100店舗の拠点目指します。
BYDシール Data
モデル | シール (後輪駆動) | シールAWD (四輪駆動) |
全長 | 4800mm | 4800mm |
全幅 | 1875mm | 1875mm |
全高 | 1460mm | 1460mm |
ホイールベース | 2920mm | 2920mm |
車両重量 | 2100kg | 2210kg |
バッテリー | 82.56kWh | 82.56kWh |
最高出力 | 230kW | 前160kW 後230kW |
最大トルク | 360N・m | 前310N・m 後360N・m |
航続距離 | 640km | 575km |
税込価格 | 528万円 | 605万円 |
導入記念価格 | 495万円 | 572万円 |