国連欧州経済委員会(UNECE)の自動車基準調和世界フォーラム(WP.29)は、運転者が一切介在しない完全自動運転システム(ADS)を対象とした、世界で初めての規制枠組みを採択しました。この枠組みは約1カ月後に発効します。
今回の枠組みは、ADSを搭載した車両を検証するための統一された国際的な安全要件と、共通の検証手法を定めるものです。安全性評価の手法と安全管理システムを基礎としており、各国共通のルールのもとで自動運転システムが成果重視の安全基準を満たすことを担保します。国ごとに規制が分かれることを避け、メーカーに明確な基準を示すとともに、安全性を確保しながら技術開発を進められる環境を整える狙いがあります。
規制の柱は主に5点です。
- 安全管理システム:メーカーは監査を受けたうえで、車両のライフサイクル全体にわたる安全管理の体制とプロセスを整備しなければならない。
- 信頼性の高い試験要件:仮想的なツールチェーンを含む試験環境が、厳格な信頼性基準を満たすことが求められる。
- 安全性の立証:メーカーは自社のADSが不当なリスクをもたらさないことを、体系的な証拠によって示す必要がある。
- 運用中の監視と報告:継続的に性能を監視・報告することで、実際の走行環境での安全性を確認しなければならない。
- 自動運転用のデータ記録装置:車両は安全に関わるADSのデータを記録することが義務付けられる。
性能面では、ADSが熟練した人間のドライバーと同等以上の運転性能を発揮することが求められます。ADSはステアリング操作や加速・減速、灯火や信号への対応といった、戦術的・運用的な運転タスクのすべてを担います。このためメーカーは、シミュレーションやテストコースでの試験、公道での走行試験を通じて、設計の堅牢性や検証結果、交通ルールへの適合を安全当局に対して実証する必要があります。
この枠組みは、高速道路から都市部までの幅広い利用場面を想定しており、用途ごとに一定の安全水準を保つ内容となっています。米国、中国、EU、日本、カナダ、英国といった主要な自動車市場がこの規制を支持しており、世界各地での導入が見込まれます。
WP.29は今回の新規制と並行して、約90件の国連規制の改正も採択しました。従来の運転操作装置を持たない車両を含め、自動運転システムを搭載した車両にも既存の車両規制が引き続き適用されることを明確にした内容で、完全自動運転を前提とした車両設計にも対応できるようにしています。
WP.29は、1958年協定と1998年協定に基づく車両規制の国際的な枠組みを担う組織です。その下で活動する自動運転・自律走行・コネクテッド車両に関する作業部会(GRVA)は、2018年以降、車両の自動化やソフトウェア、デジタル化に関する国際的な規制づくりを進めてきました。

