EVcafeで考える 第30回
by がす
決算の数字は凸凹、でも織り込み済み
今回のテスラ決算、数字の振れ幅が大きい内容でした。売上は282.4億ドルで前年比26%増。ここは伸びています。一方で調整後EPSは0.33ドルで市場予想の0.51ドルには届かず、粗利率も16.8%で予想の19.4%を下回りました。営業利益率は1.4%で、前年同期の4.1%からは下げてます。今はAIとロボティクスへの投資フェーズに全振りしてる時期なので、こういう数字の凸凹は織り込み済みという見方もできます。

マスクがわざわざ感謝してた相手
それで、決算の中身よりも、僕が今回引っかかったのは、イーロン・マスクが決算コールでわざわざマイクロンに謝辞を述べてた部分なんです。「メモリ価格が高騰してる中、マイクロンが非常にリーズナブルな条件で大量のメモリ配分をしてくれた」と。この一言、地味だけど結構重い意味を持っていると思ってます。ちなみに一応、自分もマイクロンのホルダーだったりします。
なぜ「投資」に近いと言えるのか
この「メモリのスーパー配分」、株式投資じゃないのに実質的な投資に近い構造をしているんです。
まず前提として、メモリ市場は今AI需要でとんでもない供給不足に陥っています。スポット価格で売れば普通よりずっと高い利益が出る局面です。そんな中でマイクロンがテスラを優先して、しかも割安な条件で大口供給した。これ、単なる商慣行の話じゃないと思っています。
マイクロンには「戦略的顧客協定(SCA)」という長期契約モデルがあって、顧客側が巨額の前払い金や長期購入コミットを積む代わりに、マイクロン側が優先的な生産ライン確保と価格の平準化を約束する仕組みがあります。テスラは年間250億ドル規模の設備投資枠を動かせる数少ない企業なので、この手の長期コミットができる相手として最適なんです。
車載とAIインフラ、両方の超大口顧客
もう一つ大きいのが、テスラが車載メモリとAIデータセンター向けメモリの両方で超大口顧客になっているという点です。HW4/HW5搭載車両向けの高信頼性DRAM/NANDに加えて、FSD学習用のAIクラスタやオプティマスの展開に必要な高帯域メモリ、SSDまで全部テスラが大量消費しています。マイクロンからすれば、単一製品じゃなくて自社の最先端ノード全体の稼働率を底上げできる相手なんです。
サプライヤー総出でテスラの拡張に賭けてる
実際、決算コールでもこの話は出ていました。サプライチェーン担当のカーン・ブディラジ氏が、サムスンやTSMCがオプティマスとロボタクシー向けのAI計算基盤に数十億ドル規模の投資をしている話と並べて、マイクロンのメモリ配分についても触れています。パナソニックの電池増強も含めて、サプライヤー側がテスラの拡張に合わせて投資を積んでる構図が見えてきます。適切なパートナーがいない分野はテスラが内製化する、という話も出ていました。

ここで思うのが、マイクロン側の判断は「今の目先の利益」より「テスラのエコシステムが将来もたらすリターン」を取ったということです。半導体業界はシリコンサイクルで好不況を繰り返す業界なので、スポット高値売りに走るより、テスラみたいな次世代AI・ロボティクスの世界的プレイヤーを「アンカー顧客」として繋ぎ止めておく方が、長期的な経営の見通しが立てやすい。これは株を買う投資じゃなくて、自社の在庫という現物リソースをテスラに賭けた、という意味での戦略的投資に近いと思います。
ロボタクシー・オプティマスの進捗
ロボタクシー周りの数字も出てて、無監視走行距離が38万マイルを突破してて、目立った事故はゼロとのこと。週間走行距離も二桁成長を続けているそうです。「オプティマスGen3(第3世代)」の生産も始まったものの、マスク本人が「立ち上げは長く緩やかなSカーブになる」と釘を刺してて、この辺は例年通り期待値の調整をしている感じがします。
まとめ
こういうサプライヤーとの資本的な結びつきが、単体の決算数字よりも中長期の競争力を左右すると見ています。今回はEPSや利益率で見劣りする数字が並びましたが、FSDやオプティマス、ロボタクシーの拡張スピードを支える部品を確保できてる、という点は素直に評価できるポイントだと思ってます。サムスンやTSMC、パナソニックまで含めてサプライヤー側がテスラの成長に賭けて投資を積んでる構図を見ると、外部から見ても「この先の伸びしろに賭けたい相手」と判断されてる証拠でもあります。次の四半期でこの配分がどう数字に跳ね返ってくるか、そこは楽しみに見ていきたいところです。

がす(来嶋 勇人)
福岡県出身。(株)ファミリーマートのマーケティング本部でアプリやコーヒーのパッケージを作っていたが早期退職。無職になりテスラでハローワークに通い見つけた会社に入社。そこでゼロからスタートし、そこの関連会社の社長に抜擢され就任。現在はECやアニメーション事業を行っている。

