電動革命の波に乗る! EV株投資の秘訣 第56回
by じんべい
テスラの株価が一日で14%以上吹き飛んだ。
7月23日の早朝に発表された2026年第2四半期決算を受け、発表翌日の市場ではそんな衝撃的な展開が待っていました。長期投資家でさえ思わず手が震えるような下落です。
数字だけを見れば、確かに厳しい内容でした。EPS(非GAAP)は0.33ドルと、市場予想の0.55ドルを約40%も下回りました。粗利益率は16.8%と、前四半期の21.1%から大幅に低下。営業利益率は過去1年間で最も低い1.4%という、ギリギリプラスを維持したに過ぎない結果でした。ここまで利益が削られた決算は、過去数年記憶にありません。これでは投資家が失望するのも無理はないでしょう。
ただ、じんべいは今回の決算を「地獄のような惨敗」とは捉えていません。数字の奥にあるものを読み解くと、全く異なる景色が見えてくるからです。今回はその「真相」を丁寧に解説していきたいと思います。
売上高という「稼ぐ力」は直近1年で最高——数字の奥に力強さが見える
なぜ惨敗と言い切れないのか。理由はシンプルです。企業の稼ぐ力を示す売上高が、非常に力強い数字を記録しているからです。
Q2の総売上高は282億ドルで、前年同期比26%増。これは直近1年間で最も高い数字であり、さらに言えばテスラが四半期ベースで初めて年間売上高1000億ドル超(直近12カ月累計)を達成した節目の四半期でもあります。セグメント別に見るとこの通りです。
| セグメント | 売上高 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| 自動車 | 205.2億ドル | +23% ◯ |
| エネルギー | 31.4億ドル | +13% ◯ |
| サービス・その他 | 45.8億ドル | +50% ◎ |
ここ数年伸び悩んでいた自動車事業は、Q2の納車台数が前年同期比+25%(48万0126台)と大きく増加しました。中東情勢の悪化によるガソリン価格高騰によるEV回帰の流れ、韓国・日本・台湾といったアジア各国での爆発的な販売増、ヨーロッパ市場の回復など複合的な要因が重なりましたが、本業の底力が改めて示された四半期だったと評価できます。
FSDの「逆転現象」——覚えておくべきイーロンの発言
自動車売上に含まれるFSDサブスクリプションの成長も見逃せないポイントです。Q2のFSDアクティブ契約数は148万件で、前年同期比56%増。北米では新車納入の55%以上にFSDサブスクリプションが含まれ、こちらも過去最高を更新しました。
決算説明会でイーロンが語った言葉が印象的でした。
「FSDの普及について、ある逆転現象が起きている。これまでは『車を買ったからFSDも契約する』という順番だったが、今では『FSDに乗りたいから、その車を買う』という人が出てきている」
この発言、じんべいはとても重要だと思っています。
FSD自体が購入の主目的になるということは、車両そのものが「自動運転というソフトウェアを届けるためのプラットフォーム」に変わっていくことを意味します。
テスラはすでにFSDサブスクリプションだけで年間約7.75億ドルの収益を生み出すところまで来ており、契約者数も過去最高ペースで積み上がっています。この逆転現象がさらに進めば、高マージンのソフトウェア収益がテスラの利益成長を牽引する中心的な柱になっていきます。「車を売る会社」から「モビリティAIを提供する会社」への転換を象徴する発言でした。
サービス事業が+50%——見えてきた収益の多様化
もう一つ注目したいのが、サービス・その他事業の前年同期比+50%という急成長です。この事業には、車両の整備・修理・中古車販売・スーパーチャージャー利用料・保険などが含まれます。
現在、テスラの累計車両販売台数は約970万台まで増えています。販売台数が増えれば、修理・メンテナンス・充電の需要も自然に拡大する。このビジネスは「売った後も稼ぎ続ける」構造であり、フリートが大きくなるほど収益が積み上がっていきます。地味に見えますが、長期的にはテスラの利益を下支えする非常に重要な柱です。
ここまで整理すると、テスラのQ2は「本丸のEV販売が回復した」「エネルギー事業はQ1の8.8GWhから13.5GWhへと大きく回復した」「FSDサブスクが増え、累計販売台数拡大とともにサービス収益も拡大した」——投資家にとって、売上面では十分に評価できる四半期だったと言えます。
では、なぜ利益が激減したのか
問題は先述の通り、利益率の急激な低下です。営業利益率は前四半期の4.2%からわずか1.4%まで急落しました。その主な要因を2つに絞って説明します。
一つ目は、AIへの巨額先行投資です。
研究開発費は前年同期比で約49%増加し、23.7億ドルと過去最高水準に達しました。投資先はFSD・オプティマス・AIスーパーコンピュータ「Cortex」・独自AIチップなど、テスラが次の成長の柱と位置づける分野です。短期的に利益を圧迫しますが、イーロンは以前から「AIとロボティクスへの投資を最優先する」と繰り返してきました。その方針を数字で示した四半期とも言えます。

二つ目は、規制クレジット収入の急減です。
前年同期の4.39億ドルから、今四半期は1.46億ドルへと約3分の1まで落ち込みました。規制クレジットはほぼ原価ゼロで利益に直結する収入のため、約3億ドルの減少が利益に与えるインパクトは売上減少以上に大きくなります。テスラを長年支えてきたこの高収益な収入源が、年々縮小していくのは避けがたい逆風です。
投資家の握力が試されるフェーズへ
ここで一つ、誤解されやすい点を補足しておきます。今回のフリーキャッシュフロー(FCF)はマイナス10.9億ドルでした。「テスラはキャッシュが流出している」と捉える向きもありますが、実態は少し違います。
テスラは今四半期、営業活動で47.0億ドルという十分な現金を稼いでいます。ただしAIインフラ・サイバーキャブ生産設備・バッテリー工場など将来への設備投資に57.9億ドルを使った結果、差し引きでマイナスになっているだけです。現金・短期投資残高は435億ドルと厚く、財務体力に問題はありません。
株式市場は非情です。
決算をミスすれば容赦なく投資家にビンタをくらわせてきます。今回テスラは力強い売上を記録しながら利益は大きく減少し、市場はそれにNOを突きつけた格好です。
決算説明会でCFOのヴァイバブ・タネジャ氏はこう述べています。
「今年の設備投資額は250億ドル以上になると引き続き予想しており、2026年後半にはさらに増加する見通しだ」と。
つまり、今後もR&D費用の増加によって低い利益率が続く可能性があります。FSDサブスクやエネルギー・サービス収益の拡大で何とか血が流れるのを食い止めてほしいと思っていますが、今回の決算を見ても分かるとおり、急激な回復には時間がかかるでしょう。

今のテスラはEV販売から将来のAIロボティクス事業へシフトしている過渡期です。その先行投資のために業績と株価に悪影響が出ています。しかしその先に見えるのは、FSDの逆転現象が本格化し、ロボタクシーが街中を走り回り、高マージンのソフトウェア収益がテスラを支える未来です。今は費用が先行し、成果が後から追いついてくる段階——じんべいはそう信じています。
今回の決算は、その過渡期のど真ん中で撮った一枚の写真に過ぎません。
数字だけ見れば確かに苦しい。でも写真の背景に広がる景色まで見れば、テスラが向かっている方向はぶれていない。イーロンの描く未来に賭けた投資家の握力が試されているフェーズ——じんべい自身も長期目線でテスラを見守り続けていきます。
まとめ——この決算をどう読むか
最後に、今回のQ2決算をじんべいなりに整理して締めくくりたいと思います。
悪かった点
・EPS、粗利益率、営業利益率はいずれも予想を大きく下回った。
・設備投資が急増し、FCFはマイナスに転落。
市場が失望したのは当然の結果です。
評価できる点
・売上高は直近最高水準。
・納車台数、FSDサブスク、エネルギー事業、サービス事業はいずれも力強く成長。
・年間売上1000億ドル超という歴史的節目も達成。
最後に、じんべいの見立てとして、今回の利益率低下の主因は「AIへの先行投資」と「規制クレジット減少」であり、本業の自動車事業が崩れたわけではありません。
テスラはまさに投資フェーズの真っ只中にいます。その投資が実を結ぶ日、ロボタクシーが街中を走り回り、FSDが収益の柱になる日を、じんべいは長期投資家として引き続き待ち続けます。

文・じんべい
日本企業でサラリーマンをしながら、 米国株式投資や太陽光発電投資で資産形成し、2023年3月にサイドFIRE。 株式投資では、S&P500を積立投資しながら、 個別株はテスラを中心としたEV銘柄に集中投資を実行中。YouTubeチャンネル『じんべい【テスラとNio】について語るチャンネル』登録者数:約3万人。 X(Twitter)フォロワー数:約1万人。平日毎朝、Xにて前日のテスラ株価情報を発信、また毎週末にはYouTubeでテスラ株価ニュースを配信中。

